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好事記バックナンバー
第3回「ダービーデー in 大井」
 5月22日、弊社の歓送迎会が行われた。

  大井の高橋光男トラックマンが還暦。引き続き取材現場で頑張っていただくが、ひと区切りには違いない。

 この機会に、何かできることはないかと考えてみた。

 好事家の結論は、深夜の大井競馬場への出動。トラックマン(TM)と行動を共にして、読者の皆様に“現場の風”を感じてもらうことにした。大井競馬の早朝取材の様子は、あまり知られていないのではないかと思う。 



 大井競馬場の調教開始時刻は午前3時

 「中央は早くても5時なんだろ。楽だよな」。高橋TM、辛口の先制パンチ。

 記者席は暗い。室内の光がガラスに反射して、調教コースが見づらくなるのを防ぐためだ。ライトで手元を照らし、ストップウオッチを握る。タイムを計り、ゼッケンを確認、逆算の調教時計にして、脚色(馬なり、強め、一杯など)と共に下書きして行く。

 高橋TMの横に陣取るのは市川俊吾TM。入社4年目の気鋭、前職が銀行マンという変わり種だ。



「最初は何もできなかったのですが、やっとついて行けるようになりました」

 だいぶ仕事に慣れてきたようだ。

 夜明け前の記者席最前列。言葉はほとんど交わされない。他社のTMと横並びで、黙々と作業が続く。ゼッケンの読み上げもなく、各TMは調教時計作りと馬場入りした馬の観察に集中する。時折、静寂を破るのは、携帯電話のコール音。厩舎関係者からの調教タイムの計時依頼だ。

「次に何が行く(時計を出す)のかの目安になるので、こっちも助かるんですよ」と市川TM。

 時計(半マイル60秒、3ハロン45秒ぐらいが基準)になる馬は少なくないが、気になることがあったので高橋TMに質問してみた。

――ほとんど単走。併せ馬が少ないですね。

「今開催(5月31日〜6月4日)は前開催と(5月17〜21日)と中1週。間隔が詰まっていて、追い切る馬自体が少ないからね。ただ、昔は15〜15でも併せ馬で追う厩舎が多かった。全体的に併せ馬は減っている」

 合間に、高橋TMの“個人情報”も聞き出す。

――大井TMになって何年ですか?

「かれこれ30年かな。入社当初は何でも屋。中央にも関わって、柏木さん(中央版解説者)と一緒に福島に行った。コピーもファックスもない時代、もちろん活版印刷。そりゃあ大変だった。同期は10人以上いたが、残ったのは俺だけだ」

 辞めるのを前提にしなればならない大量採用。ちなみに現在の新入社員定着率は高い。市川TMの年は2人採用。同期の鈴木宏哉は、地方課の編集記者として勤務している。

「別に地方の現場が希望だったわけではない。とにかく何でも懸命にやった。先輩に引き立ててもらったりで、俺にはツキもあったな。ただ、それだけではなく……」

 現在はテレビ解説者としても活躍する大ベテラン。キャリア30年の言葉は重い。
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