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| 2012.03.21更新 |
「蹄春と球春」
なんとも長い冬だった。月日の流れとは通常速く感じるものだが(中高年は特にそう)、今年に限るとむしろじりじりするくらい進まなかった。1月が長く2月もなかなか終わらない。寒気が次々と流れ込み、気象予報士のいう“寒さの底”が何度もくる。発表される週間予報(日〜土)が当たらない。例えば2月某日の最高気温予報は、最初13度のはずがいつしか8度に変わっており、現実は北北東の風5メートル、凍りつくような4度であった。そしてトドメに雪も降った。午後1時、駅の温度計は2度だったから“春の雪”ではない。4年に1度しかない2月29日、ミラクルレジェンドVSクラーベセクレタ。さまざま思い出に残りそうだった川崎「エンプレス杯」も中止になった。
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少し春めいた3月某日、S・スピルバーグ監督「戦火の馬」をみた。舞台は第1次大戦下の英国、少年アルバート、その愛馬ジョーイ、過酷な運命に翻弄され、それでも互いに強い絆を保ち続ける…感動ストーリー。巨匠の自信作、主演を無名の若手・ジェレミー・アーヴァインに託した(真っすぐな眼に好感度)という話題性もあったが、実際この作品は当たりだった。2時間46分、お話は長いのに、生来飽きっぽい記者がまったく飽きない。戦争(反戦)映画としても動物映画としても深い説得力があること。イギリスの田園風景(とりわけ日暮れ)が神々しいまでに美しいこと。そして何より驚いたのは、馬自身の“演技力”だ。いわゆるCG(コンピュータ・グラフィック)は原則使っていないらしい。シーン大半を“生身の馬”が演じている。
例えばこんな場面があった。アルバート少年に育てられたジョーイは戦争勃発でフランス戦場に送られるが、そこで同じ境遇にある好敵手・トップソーン(やはりサラブレッド)と運命的な出会いを果たす。いかにもスタミナが要求されそうなうず高い丘陵。2頭がテスト、試験という意味合いの駆け較べを強いられる。まさしく競馬さながらスクリーンを凝視してしまう。結局最後ジョーイが1/2馬身ほど先着し勝負あった。しかしその後、ジョーイの表情、仕草がなんともよかった。“どや顔”などとんでもない。ライバルにやさしく鼻面を合わせていく。お互いよく頑張った、いい勝負ができた、また一緒に走っていこう…そんな気持ちをごく自然に、さりげなく表現している。いうところの“目力”が凄い。名優である。
馬とは生来利口で気高く、細やかな愛情を持つ動物だとよくいわれる。乗馬経験ならぬ競馬経験しかない記者ながら、物語を見終えてああなるほどと納得した。少なくとも人智を超えて利口な馬が現実に存在すること。もっともジョーイ役を演じたファインダーズスキーは、その道のプロフェッショナルであるらしい。かつて「シービスティー」でも主役熱演、現在“馬ジャンル映画”の大スターだと、ネットレヴューに書かれていた。同馬は米カリフォルニア州生まれ・現13歳。実際競走経験もあり4戦7・5・7・5着、収得賞金500ドル(4万円)。しかし“俳優”に転身、そこで見事に素質が開花した。塞翁が馬…その言葉通りというところが面白い。父リンゼイズロベルト(ロベルト直仔)、母系キートゥザミント。血統は南関東ダート向きだったかもしれない。
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それから1週間後快晴の日、オープン戦を見に行った。横浜DeNA対福岡ソフトバンク。以前も書いたが、記者はかなり強度のソフトバンクファンで、この時季待ち切れなくなってしばしば出かける。ひいきチームがあると、公式戦はドキドキするがオープン戦はワクワクする。そしてこの日はもう一つワクワクする理由があった。“平塚球場”に初めて行くこと。拙宅から現地、小田急、JRを乗り継ぎ、実際はそう遠くもない。が、土地勘がないこと、気合が入りすぎていたこと、午後1時プレーボールなのに11時30分に着いてしまった。しばらくぶらぶら徘徊する。印象はよかった。高校野球試合などが主体、確かにこじんまり(1万人入るかどうか)だが、それだけに土の匂いを感じた。両チームの守備練習。心なしか、みな原点(土のグラウンド)に戻りはつらつとしているかにみえる。新監督・中畑清がベンチ前から駆け足で登場した。秋山監督と握手する。始球式。平塚・小池市長は見事なストライクを本多に投じた。
ゲーム後感。新生DeNAは悪くない、少なくともフレッシュな魅力はあると思った。大砲はラミレス1人だが、梶谷、石川など、小粒でも俊敏な内野手が育っており、実績のある森本、後藤、中村紀もまだまだ元気だ。あとは筒香の復帰、そしてやはり投手だろうか。三浦大輔がいまだにエースでは心もとなく、須田、高崎ら新鋭、広島から移籍したジオあたりの奮起が鍵になる。しかしまあ、それより何よりソフトバンクだ。同好の知人友人と話をすると、みなきまって“心配じゃないの…”と冷笑する。大丈夫、記者はブイブイ優勝すると思う。なるほど和田、杉内、ホールトン、そして川崎と抜けたが、摂津がいて、山田、岩崎がいて、西武から帆足が入った。さらに投打の要である内川とファルケンボーグ。だいたい和田はともかく、ホールトンなど元々たいした投手ではないし、杉内はなにやら女々しく子供っぽく、そもそも今の状況(メジャーも可能)で“巨人”を選ぶ、その志の低さに首をひねる。
すみません。どうもこの話題は妙にエスカレートしてしまうからここでやめる。で、しかしこのゲーム、もちろん勝ちましたとも。3対0。9安打3点は少し寂しい気もするが、要所で内川、長谷川が好打を放ち、山田→岡島(昨季レッドソックス)→森福→神内らの完封リレー。なんたって日本一のチームである。相手は12番目であるわけだし…。とにかく開幕7連敗(このケースはそれだけ心配)などがない限り、パリーグ優勝はもちろん、再び日本一を確信する。仮に野球トトカルチョが公然と行われれば、記者は“単勝”目いっぱいの勝負をする。
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まだ陽の明るい4時前に試合終了。改めて球場付近を散歩した。ふところが深い。同球場は、「平塚総合公園」のただ一角で、少し歩くと湘南ベルマーレが本拠とする“平塚スタジアム”が横手に大きく広がっていた。案内地図をみると、ポニーのいる“ふれあい動物園”まであるそうで、実際北口、南口、西口、ぐるり歩くとバスストップ3つほどのスケールだった。そして、公園ほぼ中央に位置する“サクラの広場”。見事な枝ぶりの樹が林立し、まだ蕾すら出ていないのに思わず触ってみたくなる。陽が沈みかけた帰り道は北風が強くなった。首都圏の桜開花予想は、当初(2月時点発表)より、ほぼ1週間遅れの4月3日前後になったとは、昨日聞いた。
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吉川 彰彦 Akihiko Yoshikawa
日刊競馬南関東公営版解説者
スカパー!・品川CATV大井競馬解説者、ラジオたんぱ解説者
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| 常に「夢のある予想」を心がけている、しかしそれでいてキッチリと的中させるところはさすが。血統、成績はもちろんだが、まず「レースを見ること」が大事だと言う。その言葉通り、レースがある限り毎日競馬場へ通う情熱。それが吉川の予想の原点なのである。
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