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 ウオッカは現役時代、26戦して〔10.5.3.8〕。64年ぶりの牝馬によるダービー制覇をはじめ、GTは7勝。年度代表馬に輝くことは2回(08・09年)。ファンの記憶にも、記録にも残る名馬だった。

 現在JRAのCMで流れているのが、ちょうど6年前の11月2日にウオッカが勝った天皇賞(秋)。2着ダイワスカーレットとは推定2センチの差。13分にも及ぶ長い写真判定の末の結果だった。勝負の神はときには残酷。あの時ダイワスカーレットが勝利していれば、今週の60周年記念競走は「ダイワスカーレットC」になっていたかもしれない。




 ウオッカを語る上で、ダイワスカーレットの存在は欠かすことができない。対戦成績は2勝3敗。通算でもダイワは12戦して〔8.4.0.0〕で、ほぼ非の打ちどころのない成績。2センチ差に泣いた天皇賞(秋)も7ヵ月のブランク明け。2番手の馬に絡まれながら千通過58秒7で飛ばす流れで、後半を58秒5でまとめて見せた。0秒8も更新するレースレコードを演出したのは、間違いなくこの馬。ゴール寸前で主役の座から転げ落ちてしまったが、ウオッカとどちらが強い競馬をしたかと言われれば、ダイワを上に見る人も多いだろう。

 生涯オール連対のダイワに対し、ウオッカは6着以下の惨敗も5回。折り合いに難しい面を残して、アッサリ負けることもしばしば。ただ、東京コースに限れば〔6.3.2.1〕で、着外は取消明けの3歳秋のジャパンC4着だけ。こと府中の長い直線には絶対の自信と強さを誇り、弱みを見せるときとのギャップもファンを惹きつける要素だったのだろう。

 考えて見れば、父タニノギムレットもダービー馬で親子制覇になる。父の小回り中山でのスプリングS、皐月賞(3着)の走りを思い出すと、また不器用なこと。広く伸びのびと走れる舞台が合うのは、父の影響を大きく受けたと思える。




 東京コースで走らなかったことはないのだが、筆者のイメージはつかみづらい馬。年をとっても折り合い面の不安が解消されず、レースの戦法はまちまち。というか、競走生活終盤につれて良い意味でいえば自在性を帯びてきた。5歳秋の毎日王冠(2着)のように逃げの手に出ることもあれば、その年の秋の天皇賞(3着)のように思い切って脚をためる形を取ることも。常に大きな支持を集めていただけに、見ている方にはスリリングな展開も多かった。

 乗り手にも難しさはあったようで、GT勝ちの鞍上の内訳は武豊騎手:3勝、四位騎手:2勝、岩田・ルメール騎手が各1勝。これだけの名馬でも主戦が定まらなかったことにも現れている。外国人騎手への依頼率の高さ、以前に比べ師弟関係が薄れたことを考えれば、現在ではそれほど驚くことはないかもしれないが。3歳秋以降は連勝したのが1度だけ。ダービー馬であるがゆえ、結果も出し続けなければいけない宿命であっただけに、非情な降板劇にも映った。

 かつてとは違い、牝馬でもクラシックディスタンスで牡馬一線級に太刀打ちすることが珍しくなくなった。メモリアルホースの8月にも取り上げられたエアグルーヴがまず先駆けだと思うが、近年はダイワスカーレット、ブエナビスタ、そして今週の天皇賞(秋)にも出走を予定しているジェンティルドンナ。それぞれ名だたる牡馬の強豪を蹴散らして、大レースを制覇。歴史的名牝の名を築いた(築いている)。

 これらと比較して、どれが一番強いとかは決めることができないが、東京のマイルを1分32秒4で駆け抜け、二千の天皇賞(秋)は1分57秒2、そして二四のジャパンCでは2分22秒4。マイルのGTで4勝しており、本質的にはマイラーの気もするが、並み外れたスピードと瞬発力を兼ね備えていたのは間違いない。

 今週行われる記念レースのネーミングは「豪快な淑女」。「豪快」はわかる気もするが、「淑女」とはどうなんだろう。しとやかで大人の女性というよりは、少々気難しくてわがままな女性だった印象がするが…。上でも述べたように、ドラマティックな展開の主役に立つことも多かったし、「主演女優」や「ヒロイン」ということばが、ピンとくるような気もする。

 何かのめぐりあわせか、ウオッカCと同じ日の新馬戦にはウオッカの2番目の仔「ケースバイケース」が出走を予定。初仔のボラーレが残念なことになってしまっただけに、おのずと期待は高まる。






〔小松 真也〕




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