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冬一番の名物重賞は何か。平地GTを除くと、100回を楽に超える中山大障害は有力候補だが、もとは春秋(実際は春冬)の年2回だった。となると、ステイヤーズステークスを筆頭格としても良かろう。何しろ第1回から昨年の第47回まで、施行条件がほぼ変わっていない。調べてみると、ありそうでない記録。珍しい重賞である。

 距離が延びたり縮んだり、季節やコースが変わったり。かつての菊花賞トライアル=京都新聞杯は5月のレースになって久しい。GTとて例外ではない。オルフェーヴルが勝った皐月賞は東京競馬場で行われた。阪神ジュベナイルフィリーズは今年で第66回だが、前身は牡牝混合の阪神3歳ステークス。通算回数に意味があるのか、筆者は常々疑問に思っている。

 ステイヤーズSはレース名を地で行く正統派。歴代勝ち馬を見ると、一昨年のトウカイトリックなど、その時代を代表するステイヤーが名を連ねている。コース2周の特殊な長距離戦。他に舞台を移しようがないのも確かだが、半世紀近くも例外なく中山芝3600mで行われてきたのは別に理由がある。



 競走体系の根幹レースであるGTが他の競馬場で行われるのは、馬場やスタンドの改修の際。長い期間、使用していれば、傷んできて補修や改装が必要となり、どうしても開催できない時季が生じる。デットーリの好騎乗に沸いたファルブラヴの2002年(平成14年)ジャパンカップは中山。菊花賞も過去74回のうち1度だけ阪神競馬場で行われている(1979年=昭和54年、優勝ハシハーミット)。

 また、伝統競走はJRA設立以前から行われている。いろいろ変遷があるのはむしろ自然で、ダービーの第1回は今はなき目黒競馬場。天皇賞も、当初は春が阪神、秋が東京だった。ちなみ第1回から開催場が変わらず同距離のGTは、平成生まれのNHKマイルカップ、ヴィクトリアマイル、グレード制導入の1984年(昭和59年)創設のマイルチャンピオンシップ。いずれもステイヤーズSより歴史は浅い。

 改修によって競馬場が変わるといっても、意識的に避けている季節がある。ダービーと有馬記念の開催。ファンの注目度が格段に高く、ある意味で別格のGT。昨年のJRA広告費も、この2大レースに力を入れて注ぎ込まれた。

 ダービーと同時期に行われるエプソムカップ(今年で第31回)は東京芝1800mで不変。GUでも改修以外で距離や競馬場の変更があった重賞が少なくない中、貴重なGVである。どこまで“記録”を伸ばすか、注目している。

 ステイヤーズSは有馬記念と同じ暮れの中山開催。別定GUだ。有馬記念は第1回だけ中山グランプリ。その旧名にふさわしく、以後も中山を貫いているが、第10回まで2600mだった。もうすぐ50回を迎えるのに距離まで一緒という点で、ステイヤーズSは際立った存在である。

 正確に記すと、何もかも同じではない。現在は内回り2周だが、1周目が外回りだった時期がある。第9〜12回。スタート地点は現在より1コーナー寄りだった。第30回、1996年(平成8年)まではハンデ戦(格付けはGV)。ステイヤーが活躍する趣き自体は変わらないものの、GU昇格後はメジロブライト、デルタブルース、マイネルキッツらGT級が登場して勝つようになり、レベルは以前より上がっている。

 長距離重賞といえば騎手の駆け引きが語り草だが、あえて馬にこだわってみたい。振り返る資料として、外→内の最後の年、1978年(昭和53年)の第12回を取り上げる。カネミノブが勝った有馬記念の翌週、12月23日。当時は皇太子誕生日だ。

 勝ったのはフジノハイハット、鞍上は柴田政人(現調教師)。3分49秒2のレコードだった。3歳(当時の表記で4歳)、51キロ、10番人気。2年後の1980年(昭和55年)もレコード(3分47秒7)で制していて、この時は52キロ、8番人気。内回り2周の良馬場で比較すると、斤量こそ違えど2005年(平成17年)のデルタブルース(58キロ)と同タイム。立派な記録である。



 ステイヤーズSを2回勝った馬は、他にピュアーシンボリ(ともに1番人気)、スルーオダイナ(同)、アイルトンシンボリ(1、2番人気)、GUになってホットシークレット(7、1番人気)。2回とも人気薄だったのはフジノハイハットしかいない。

 ステイヤーズSは長距離適性最重視。今も昔も変わらない原則だが、分かっていてもフジノハイハットは狙いにくかった。古馬になって以降は25戦、3着以内はステイヤーズSの3着(1979年=昭和54年)、1着だけ。4〜5着も3200m戦で3回。最後の勝利の前走は、2000mの800万条件戦で11着に敗れている。

 レコード勝ち2回の3600m以外では用なし。トウカイトリックも顔負け、フジノハイハットはステイヤーズS史上bPの長距離専用馬と言えるだろう。 




〔田所直喜〕




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