日刊競馬トップページ
振り返るコーナー メニュー



 年2回、JRAが発行している『中央競馬重賞ハンドブック』。GUとGVの全レースを前後期に分けて、第1回からの3着以内馬、配当など各種記録を掲載。各重賞の歴史を調べる際に、大変重宝している。なお、GTは年1回、『中央競馬GTハンドブック』。もちろんGU〜Vより資料は手厚い。

 重賞ハンドブックの目次〈1月〉を見ると、アメリカジョッキークラブカップが載っている。GTシーズンの谷間。今年で第55回、冬場の名物GUと言っていいだろう。

 略称はアメリカJCC。JRAの年間日程表である開催日割にも、そう書いてある。しかし……この重賞を“アメリカジェーシーシー”と呼ぶ人はおそらく少数派。いや、ほとんど聞いたことがない。ちなみにJRAホームページのレース結果・レース選択の画面にはアメリカジョッキーCと表記されているが、略称として主流とは? AJCC、またはAJCと書いてアルファベット読みが多い気がする。

 筆者は“エージェーシーハイ”派。カップをわざわざ杯と置き換えてしまうが、うなずいてくれる方はいるはずだ。これだけ書き名、呼び名が分かれる重賞を他に知らない。

 もうひとつ不思議に思うのは、国名だけでレースがイメージできない点。「去年のアルゼンチンで人気だった」とか「3歳の時、ニュージーランドで2着」なら不自然ではないのに、「アメリカンボスってアメリカを勝っていたっけ?」は、しっくり来ない。13年前、2001年(平成13年)のAJC杯優勝馬である。

 アメリカンボスは次走の中山記念も快勝。その後は完敗続きで、年末の有馬記念は13頭立ての最低人気になってしまったが、マンハッタンカフェの2着に食い込んだ。アッと驚く一変劇だったとはいえ、同じ年にGUを連勝していた実力馬。今考えれば、人気がなさすぎた感がある。

 アメリカンボスに強豪のイメージはないものの、通算で重賞4勝、GTで2着1回。立派な一流馬の戦歴になっている。



 タカマガハラ、スピードシンボリ、タケホープ、グリーングラス、ホウヨウボーイ、ミホシンザン、スペシャルウィーク。名前を聞けば活躍した時代が思い浮かぶ強豪優勝馬が多く、最近10年に限ってもマツリダゴッホ、トーセンジョーダン、ルーラーシップと3頭のGT馬がAJC杯を制している。毎日王冠のようなGT前哨戦ではなく、中山記念より勝ち馬のレベルは上。数あるGUの中でも、最高峰に近い位置づけでいい。

 ただ、強い馬が勝っていても、なぜかレース自体に強烈な印象を残す年が少ない。その点は毎日王冠や中山記念が上回る。GTシーズンオフの1月という季節の影響があるのかもしれない。書き名や呼び名がはっきりしないのも、名が体を表しているのかもしれない。

 中では、昨年の「降着せず」は大きな話題だろう。最後の直線でダノンバラードが内側に斜行。進路を妨害されたのは2着トランスワープ、9着ゲシュタルト。ともに大きくバランスを崩す不利で、“旧ルール”だったら9着降着が妥当と思えた。降着制度導入以前なら失格でも不思議ではない。ゴールでガッツポーズをしてしまったダノンバラードの鞍上=フランシス・ベリー騎手は、短期免許で来日していた。1月26日から2月10日まで、実効6日間の騎乗停止。軽い処分ではない。



 昨年1月から適用の新ルールは、妨害がなければ被害馬が加害馬に先着したと裁決委員が判断しないと加害馬が降着にならない。変更から1ヵ月足らずでルール自体に不慣れとはいえ、レース直後に審議ランプすら点かなかったことに関係者もファンも違和感を覚えた。脚勢が鈍っていたゲシュタルトはともかく、伸びかかったところで前に入られたトランスワープ陣営から異議申し立てがあったのは理解できる。

 結果は覆らなかった。確かにダノンバラードがまっすぐ走ったとして、トランスワープが勝ったかどうかは微妙。人知の及ばぬ領域。実際のところ、採決委員とて迷ったのではないかと思う。

 「あれが降着にならない……」。後味は良くなかった。4年前、2010年(平成22年)のジャパンカップ。ブエナビスタがローズキングダムの進路を妨害して1着と2着が入れ替わったが、現在ならおそらく「被害馬が加害馬に先着することはない」。ルールによって歴史が変わる。競馬には、そういう一面もある。

 熱戦になれば有利不利は付き物だが、誰もが納得する好勝負を期待したい。今年1月もベリー騎手は短期免許で来日予定。騎乗機会があれば、汚名返上を期するだろう。アメリカジョッキークラブカップ、AJC杯は中山芝2200m。発走は1月26日、15時35分である。




〔田所直喜〕




日刊競馬トップページ   

株式会社日刊競馬新聞社 東京都品川区大崎1-10-1