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東京大賞典・ゴール前 題字
1998年12月23日
第44回東京大賞典
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馬柱  オーラス有馬記念、一年の競馬の締めくくり…。などと言わないで下さい。まだGTが残っています。12月29日、東京大賞典です。今年はなかなかの好メンバーだと思うのですが。ぜひ観戦してください。お供には日刊競馬を…。と、まず宣伝をさせていただいて。

 でもこのレース、社内事情で2度しか競馬場で観戦していないんです。もっぱらテレビ観戦です。馬券で儲けた記憶もありません。もっとも、馬券で儲けた記憶は他のレースでもほとんどありませんが。

 2001年まで南関東は12月の最終週が2場開催というのが定番でした。当然、我々地方課全体の仕事はいつもの2倍です。当時、一番の下っ端であった私も、馬1頭1頭の成績をカードに貼る成績処理を「遅い」「貼り間違えている」「デブ」と叱咤激励を受けながら必死にやっておりました。そんな感じですから、仕事を切り上げて競馬場に観戦に行くなんてできません。2場開催がなくなった現在、今度は各地からやってくる転入馬の馬柱作りに追われ、やはり競馬場に行くことはできていません。昨年のアジュディミツオーの逃げ切りも会社のテレビで見ていました。

 私が現場で観戦したのは1998年と1999年。99年はワールドクリークが勝って、1番人気のメイセイオペラが11着惨敗。メイセイ→ファストフレンドの馬単に張り込んでやられた記憶しか残っていません。

 さて本題の98年。地方競馬にも強い馬がたくさんいました。この年はダートグレード競走の勝ち馬だけでも11頭。トミケンクイン、リバーセキトバ、エフテーサッチ、サンディチェリー、ロバリーハート、カガヤキローマン、ホクトロビン、ブライアンズロマン、イジケヒカリ。そしてアブクマポーロ、メイセイオペラ。勝ち鞍は18でした。ちなみに今年の地方馬のダートグレード勝ちは5つです。グレード制が導入されて2年目。地方びいきにすれば、何とも楽しい年でした。

 そんな年の締めくくり、東京大賞典。アブクマポーロとメイセイオペラというGIホース2頭の一騎打ち。興味はその一点。申し訳ないけれど、今年のJRA勢では露払いがせいぜい、この2頭にはそう思わせるだけの凄みがありました。

 その年のアブクマポーロは怪物と言っていいほどの活躍でした。川崎記念、帝王賞のGI2つを含むダートグレード5勝。JRA勢を向こうに回し、ほぼパーフェクトで勝ち進んでいました。唯一の敗戦は盛岡・南部杯。道中は何か気が乗らない走りで直線はよく伸びたものの、前を捕らえきれず3着。出川克己調教師が「行く前から歯車が狂っていた感じ」と言うように、不完全燃焼な印象でした。それでも、遠征帰りのグランドチャンピオン2000を馬なりで快勝。本来のリズムを取り戻し、暮れの大一番を迎えました。

 その南部杯。不良馬場をものともせずレコードで駆け抜けたのは、メイセイオペラでした。帝王賞では逃げたものの、直線あっさりアブクマポーロに交わされて3着。地元に戻ってマーキューリーCでダートグレード初制覇。そして南部杯。レコードを1秒1更新する実力を知らしめるには十分な快走をしてみせます。確固たる地位を築き、世代交代を進めるべく大井に乗り込んできました。

東京大賞典ゴール前  レースはJRA勢が大井独特の馬場にモタつくのを尻目に道中3番手を進むメイセイオペラ。これをマークする形で5番手の内を行くアブクマポーロ。先に動いたのはメイセイオペラ。それに合わせるようにアブクマポーロ。さあ一騎打ち、と思ったのも一瞬。食い下がろうとするメイセイオペラをあざ笑うかのようにアブクマポーロが一気に突き抜けました。そしてゴールの瞬間、「なんも、なんも」「馬が走ってくれただけ」とどんなビッグレースを勝ってもいたってクールなジョッキーが、愛馬の強さを再確認するかのように、後ろをのぞき込む姿勢のまま左手で派手なガッツポーズ。「今年は南部杯では負けたけど、それ以外はずっと勝ってきたんだし、最後はポーロのためにもいい形で締めくくりたかった」(石崎隆之騎手)。「地方競馬から海外挑戦」という夢のような話がぐっと現実に近づいた一戦でした。

 翌年、メイセイオペラはフェブラリーSで地方所属馬として初めてJRAGIを勝ちます。アブクマポーロも海外遠征こそ断念しましたが、川崎記念、ダイオライト記念と連勝。出川克師はどちらのレース後も「メイセイオペラと対戦するまでは負けられませんからね」とライバルを意識したコメントをしていました。明けて7歳。“衰え”“翳り”などまるで感じさせず、まだまだこれからという矢先にアクシデントがポーロを襲います。馬房内で左後肢飛節捻挫を発症。北海道で治療し、一旦は帰厩しましたが、「本来のポーロに戻るには時間がかかる」との判断から引退。強いポーロのままでの幕引きでした。

 このコーナーのフェブラリーSの項で吉川先輩はホクトベガを「暴力的な強さ」と表現していましたが、アブクマポーロは「計算し尽くされた強さ」でした。石崎隆之騎手が作戦を練り上げ、ポーロがそれにしっかり応える。実際は作戦どおりに進んではなかったのかもしれません。ただ、見ている側からは「無駄なく、スマートに、相手を圧倒する」そんな感じに受け取れるレースぶりでした。

 アブクマポーロは今年9月種牡馬を引退。にいかっぷホロシリ乗馬クラブで来年の乗馬デビューに向けて調教中とのこと。残された産駒は50頭。うち来年のデビューを待つ明け2歳は3頭。ポーロのあとを継ぐような仔が出てきてほしいものです。

[星野 貞広]

☆第44回東京大賞典 優勝馬☆
アブクマポーロ 1992.2.27生 牡・鹿毛
クリスタルグリッターズ
1980 鹿毛
Blushing Groom
1974 栗毛
Red God
Runaway Bride
Tales to Tell
1967 鹿毛
Donut King
Fleeting Doll
バンシューウェー
1982 鹿毛
ペール
1968 鹿毛
Milesian
Paleo
ポーロニアユミコ
1978 黒鹿毛
プロント
ミスオリオンノ弐
 
 



馬主………(株)デルマークラブ
生産牧場…門別・高澤 俊雄
調教師……船橋・出川 克己

通算成績 32戦23勝[23.3.3.3]
うち地方[22.3.3.2]
うち中央[1.0.0.1]
主な勝ち鞍 川崎記念(1998,99年)
帝王賞(1998年)
東京大賞典(1998年)

受賞歴 NARグランプリ
年度代表馬(1998年)
ダートグレード競走
最優秀馬(1998年)

全成績はこちら


1998年12月23日
第44回東京大賞典(G I) 大井・ダート2000m・良
[6]11アブクマポーロ牡756石崎 隆之2.05.4
[2]メイセイオペラ牡557菅原  勲2.1/2
[7]12コンサートボーイ牡756的場 文男3/4
 上がり 51秒6−37秒9
単勝 180円  複勝 110円 130円 210円
枠番連複 2−6 320円 普通馬複 3−11 340円  
枠番連単 6−2 530円 馬番連単 11−3 570円  




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