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阪神3歳牝馬S・ゴール前 題字
1993年12月5日
第45回阪神3歳牝馬S
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馬柱 ☆女王誕生☆

 1993年デビューの世代といえば、牡馬は何と言っても3冠馬ナリタブライアンである。ナリタブライアンは8月15日に函館でデビュー。朝日杯を勝つまではムラな成績で未完の大器ぶりを発揮していたが、朝日杯勝ちをきっかけに一気に完成へと向かい頂点に到達した。
 そして牝馬はヒシアマゾンである。ヒシアマゾンはナリタブライアンのデビューからほぼ1ヵ月後の9月19日、中山ダート千ニでデビュー勝ちした。アマゾンが生涯でダートに出走したのはこの時と次走のプラタナス賞(2着)の2回だけである。
 芝転向初戦は京成杯3歳(現・京王杯2歳)S。1番人気はフィールドボンバー、2番人気インディードスルー、3番人気サクラエイコウオー。紅一点のアマゾンは6番人気だった。勝ったのは4番人気ヤマニンアビリティで、アマゾンはクビ差2着。3着インディードスルー以下に4馬身差をつけて、次走に期待を持たせていた。

 そして12月5日、第45回阪神3歳牝馬ステークス。南関東の女王ロジータの娘シスターソノ(父ナスルエルアラブ)が1番人気だった。シスターソノは血統もさることながら函館の新馬でのちのフラワーC馬オンワードノーブルに、続く500万特別でものちの重賞(NHK杯など)4勝馬ナムラコクオー(14歳の今でも現役だが、2003年10月以降出走なし)に完勝していたので、この時1番人気も当然ではあった。しかし、のムードがそうさせたのか。シスターソノはかかってハナを奪いに行った。好位づけの正攻法で連勝していた馬が…である。シスターは途中からハナをシアトルフェアーに譲り、2番手に落ち着いたかに見えたが、4コーナーではまた先頭に立つ。しかし直線ではさすがに余力がなくなり失速、11着に沈んだ。
 2番人気に支持されたアマゾンは、2・3番手追走から4コーナーで先頭に立ち、最後は5馬身差をつけて快勝。レコードのおまけつきという強さを、競馬ファンに見せつけていた。“女王ヒシアマゾン”誕生の瞬間だった。そして翌94年は京成杯2着のあと、クイーンC→クリスタルC→ニュージーランドT4歳S→クイーンS→ローズS→エリザベス女王杯まで6連勝、有馬記念がナリタブライアンの2着。競馬史の1ページを創っていくのだった。

 ヒシアマゾンは血統背景からして、ブレイクが約束されていたようである。父シアトリカルは1982年アイルランドで、ヌレイエフ(父ノーザンダンサー)とツリーオブノレッジ(父ササフラ)との間に生まれた。愛・英・米などで22戦10勝の成績を残したが、シアトリカルは晩成型だった。アメリカに転戦した5歳にBCターフなどを4勝した。そしてエクリプス賞最優秀芝牡馬に選出された。
 シアトリカルの弟には日本で走って97年に安田記念を勝ったタイキブリザード(父シアトルスルー)がいる。またシアトリカルの1歳下の妹ノースオブエデン(父ノースフィールズ)は、パラダイスクリーク(父アイリッシュリヴァー)の母である。晩成といえばタイキブリザードもそうで、安田を勝った時は6歳だった。パラダイスクリークも本質的に晩成型。3歳時にハリウッドダービーを勝ったが、5歳時の94年にブレイク。アーリントンミリオンなどを勝って、エクリプス賞最優秀芝牡馬を受賞した。
 母ケイティーズ(父ノノアルコ)もシアトリカル同様アイルランド生まれ、愛・英で通算10戦4勝。2歳時は1勝に終わったが、3歳時にアイルランド1000ギニーなどを勝った。繁殖牝馬としてアメリカに輸出されケイティーズファースト(父クリス・ゴーステディなどの母)などを産んだあと、91年にヒシアマゾンを産んだ。

☆プライド高き女王たち☆

 ところが95〜96年。ナリタブライアンも不本意な時期を送っていたが、女王ヒシアマゾンの方も2勝はあったものの不本意な2年だった。引っ掛かったり…とか、出遅れ…とか、さらには脚部不安など。特に96年のエリザベス女王杯の時は最悪で、異常なまでにパニックに陥っていた。ゲートには入らないわ、走るリズムは悪いわ、斜行するわで、ドタバタの末2位降着&再審査でジャパンC出走不可という結果だった。あまりにもアマゾンらしくなくて、一緒に出走していたホクトべガもビックリしていた。
 それでもさすがアマゾン…というところを見せたのは、2着ではあったが95年のジャパンCだろうか。アマゾンの強力なサポーターだったカメラマンの浜野祐子氏は「一周目の彼女の眼が、一生忘れられない」と言う。スタートミスが続いていたアマゾンは、この時も出遅れた。「絶対勝てないって彼女自身分かってながら、あんな出遅れに自分は負けられないという気持ちと、あれがなければというめちゃくちゃ悔しそうな顔で走ってた」。アマゾンは最後猛然と追い込み、1着ランド(ドイツ)に1馬身1/2差まで詰めた。しかしアマゾンはこれで燃え尽きたのかもしれない。

 中野隆良厩舎の2大女王=ヒシアマゾンと“ダートの女王”ホクトべガ(90年生まれ・父ナグルスキー)。パワフルな女王ホクトべガの持つ迫力には誰もが圧倒されていた。そのホクトべガが自分とは違うタイプの、シャープな女王アマゾンには一目を置いていた。前出の浜野氏は「プライドの高さ」がアマゾンの一番の魅力と言う。アマゾンは「調子が悪くても、決して他の厩舎の馬に弱さを見せなかったし、トレセンでたくさんの馬がいるときにアマゾンがどこにいるか探さなくても一目でわかった。ホントに女王様という感じで彼女だけ光り輝いてすごいオーラだった」。
 私は個人的に、ホクトべガは丹波産の松茸、ヒシアマゾンはぺリゴール産のトリュフというイメージを持っていた。それにしても、両馬ともプライドの高さはハンパじゃなかったと思う。

[樋渡 富子]

☆第45回阪神3歳牝馬S 優勝馬☆
ヒシアマゾン 1991.3.26生 ・黒鹿毛
Theatrical
1982 鹿毛
Nureyev
1977 鹿毛
Northern Dancer
Special
ツリーオブノレッジ
1977 鹿毛
Sassafras
Sensibility
Katies
1981 黒鹿毛
ノノアルコ
1971 鹿毛
Nearctic
Seximee
Mortefontaine
1969 鹿毛
ポリック
Brabantia
Nearctic 4x3
 



馬主………阿部雅一郎
生産牧場…米国・M.アベ
調教師……美浦・中野 隆良

通算成績 20戦10勝[10.5.0.5]
主な勝ち鞍 阪神3歳牝馬S(1993年)
エリザベス女王杯(1994年)

受賞歴 JRA賞
最優秀3歳牝馬(1993年)
最優秀4歳牝馬(1994年)
最優秀5歳以上牝馬(1995年)

全成績はこちら


1993年12月5日
第45回阪神3歳牝馬S(G I) 阪神・芝1600m・良
[2]ヒシアマゾン牝353中舘 英二1.35.9
[5]ローブモンタント牝353M.キネーン
[3]ケイアイメロディー牝353熊沢 重文ハナ
 上がり 48秒6−36秒5
単勝 520円  複勝 190円 600円 210円
枠番連複 2−5 3000円 馬番連複 3−8 8220円  




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